忘れた



「もう…やだ…テストなんて。勇介不足過ぎて辛い」


「そうだね、辛いね。はい、次は現文だよ。教科書出して」


あたしの嘆きは、里美にスルリとかわされる。


「聞いてよ、みんな。勇介酷いんだよ。

あたしは会わないって言っただけなのに、電話もダメだって。

メールは毎日くれるんだけど、タイトルがいつも“返信不要”なの」


…誰も聞いちゃいねえ。


そりゃ、そうだよね。休み時間は10分しかないもん。


次の時間もテストだし、少しでも頭に叩き込もうと、みんな必死なんだよね。


舞花の席に集まった、あたし、里美、麗、梨沙。


あたし以外のみんなは既に、教科書とにらめっこしていた。


あたしはシュンとして、持っていた教科書を開く。そんなあたしに気づいたのか、舞花が声をかけてくれた。


「明日で終わりなんだから、頑張ろう」


そうだ。明日には勇介に会えるんだ。


あたしはちょっぴり元気になった。

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