忘れた



まだかな。


時計を見ると、夜の9時を5分過ぎたところだった。


窓から出した顔に、冷たい風が容赦無く吹き付ける。


さ、寒い…


ブルブル震えながら、さらに5分待つ。


すると、見慣れた車が近づいてくるのが見えた。


あたしは嬉しくなって、部屋を飛び出した。


「勇介ッ! おーい」


あたしは子供みたいに、飛び跳ねながら両手を振った。


あたしの目の前に、勇介の車が停まる。


「奈緒、テストお疲れ様」


開いた窓ガラスから、勇介のくしゃっとした笑顔が見えた。


「また、駐車場借りるな」


あたしが頷くと、窓ガラスが閉まって車が動き出した。


久々に見る、勇介の笑顔。久々に聞く、勇介の低い声。


やっぱり、カッコいいなあ。


勇介が来るのを玄関先で待って、一緒に家の中へ。

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