忘れた
病院に到着すると、エレベーターを待たずに階段を駆け上がった。


洋子さんに、部屋番号は聞いてある。


3110号室。個室だった。


恐る恐る、ドアを開ける。


そこにいたのは、何本ものチューブに繋がれた、包帯だらけの勇介だった。


そばには洋子さんもいた。


「奈緒ちゃん」


洋子さんは弱々しく微笑んだ。


あたしは勇介の元へ駆け寄った。


頭は包帯でグルグル巻きにされていて、顔はかすり傷が何箇所か、痛々しく残っていた。


酸素マスクを装着した勇介は、目を閉じていた。


あまりに痛々しくて、可哀想で。あたしは涙が出そうだった。


「洋子さん。勇介は、いつ目が覚めるんでしょうね」


あたしが言うと、洋子さんは悲しそうな顔をした。


「分からない…明日目が覚めるかもしれないし、1年後かもしれないし、ずっとこのまま…」


それ以上は、言わないで…

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