忘れた



勇介が一般病棟に移ってから、約1週間。


「このまま植物人間になっちゃうのかな…勇介」


あたしは弁当を食べながら、ボソリと呟いた。


事情を知っているみんなは、黙ってしまう。


最近、ずっとこの調子だ。あたし、空気悪くしてる。


「ごめん、みんな。この話は無しだねっ」


わざと明るく振る舞うと、里美が言った。


「奈緒、勇介さんを信じよう」


力強いこの言葉に、あたしは頷いた。


あたしが弱気になって、どうするんだ。


弁当を食べ終わり、携帯の電源を入れる。


着信が1件入っていた。


洋子さんだ!


「洋子さんから電話がかかってきてるッ」


ビックリして大きな声が出た。


「早く掛け直しなよっ」


舞花が促す。


「でも…怖い。し、死んじゃったとか言われたら…」


泣きそうになるあたしに、麗が言った。


「勇介さんの目が覚めたかもよ」


そ、そっか。いい方に考えなくちゃ。

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