忘れた
病院に到着したあたしは、階段を駆け上がって、勇介の病室を目指した。


3110号室。


ああ、やっと勇介にあえるんだ。心臓がバクバク言ってるのは、走って来たせい? それとも…


あたしは勢い良くドアを開けた。


勇介は相変わらず包帯だらけだが、ベッドに横になって、洋子さんと何か話しているところだった。


酸素マスクは、もうしてない。


「勇介ッ」


あたしは勇介の元へ駆け寄って、彼の両手をぎゅっと握った。


「よかった…本当に心配したんだよ? よかった…起きてくれて」


勇介の栗色の目を見ていると、自然と涙が溢れてきた。


嬉しくて嬉しくて、仕方がなかった。


すると勇介は、キョトンとした顔であたしを見て、言った。


「なんだ、帰ってきてたんだ」


は?


「えっと…勇介? それはどういう…」


「どういう、じゃねえよッ」


勇介は、いきなり声を荒げた。


あたしはわけが分からず、混乱した。

< 169 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop