忘れた
「勝手に家飛び出して、今までどこ行ってたんだよッ

母さんも父さんも俺も、どんだけ心配したと思ってんの?」


は、話が読めない…


「何だよ母さん、脅すなよ。死んだとか、冗談でも言うもんじゃねえって」


ホッとした顔で洋子さんを見上げる勇介は、あたしの知ってる勇介とは別人のようだ。


ふと前を見ると、悲しそうな顔の洋子さんと目が合った。


一体、どういうこと?


「大体、何で家出なんかしたんだよ、姉ちゃん」


ね、姉ちゃん?


あたしは後ろを振り返ってみるけど、誰もいない。


あたし?


あたしを姉ちゃんだと思ってんの?


何で?


混乱しているあたしの横に、いつの間にか洋子さんがいた。あたしに小声でささやく。


「奈緒ちゃん、ちょっといいかな」


あたしは、洋子さんに続いて病室を出た。

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