忘れた
第2章

タイムスリップ

目の前にいる、奈緒という女の子。


誰なのかさっぱり分からない。


病室までわざわざ来てくれたということは、きっと俺と親しかったんだろう。


奈緒は大きな目に涙をいっぱい溜めて、俺を見つめていた。


そのなんとも言えない悲しそうな顔に、俺は申し訳ない気持ちになった。


「ごめん。俺も混乱してるんだ。

いきなり母さんに、あんたは26歳なのよ、とか、事故のショックで記憶を失っているんじゃないかしら、とか言われて…

何が何だか、分かんねえよ。

ただ、俺は高3だっつーの。母さん、一体何言ってんだ」


すると奈緒はカバンから四角い鏡を取り出して、俺に渡した。


「自分の顔、見てみて」


疑問に思いながらも、俺は従った。


そこに写っていたのは…


「は? 何で…

すげえ老けてる…」


到底高校生とは思えない、自分の顔だった。

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