忘れた
慣れない手つきで、画面をタップする。


すると、たくさんの写真が表示された。


どの写真にも、あの奈緒の姿が写っていた。


変な顔をした、奈緒。


口を開けて寝ている、奈緒。


美味しそうに食べる、奈緒。


花が咲いたような笑顔の、奈緒。


奈緒の隣に写る俺は、幸せそうに笑っていた。


奈緒…


もしかして、俺たち…


付き合ってたのか?


だとしたら俺、すごく悪いことをした。いきなり姉ちゃんと間違えるなんて。


でも、ごめん。奈緒。


君のこと、俺は全然知らないんだ。


しばらくして、母さんは帰って行った。


1人になってからも、俺はその写真を1枚1枚眺めていたけど、どれも覚えの無い写真だった。


2人で遊園地へ行ったらしい。


ハロウィンの装飾の前で…


何も思い出せない。

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