忘れた
個室であたしはひとしきり泣いた。ハンカチで涙を拭いて、鼻をかんで、外に出る。


鏡に映るのは、なんとも情けない顔をしたあたしだった。目は真っ赤だが、腫れてはいない。


そのうち充血は収まるだろう。


あたしはテーブルに戻ることにした。


席に着くと、勇介はちょうどオムライスを食べ終えたところだった。


「おう、やっと来たかー」


うわ、すごい…


机に並んだ料理の多さに、あたしは度肝を抜かれた。これを1人で食べるとは…


あたしは黙ったまま、カレーを食べ始める。すると勇介は、今度はグラタンを食べ始めた。


ひたすら食べ続けるあたしたち。


お互い食べ終わるまで、あたしたちは一言も話さなかった。

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