忘れた
今日は、勇介に会いに行こう。


いつもダンス練習は7時までだったから、面会時間に間に合わなくて、土日にしか見舞いに行けなかったけど。


今日は急げば間に合う!


あたしは大急ぎで教室に戻り、カバンを掴んで走った。


学校を出て、薄暗くなった道をひたすら走った。


が、体力不足ですぐにバテた。


ゼーゼー言いながら膝に手をつき、中腰になるあたし。


道の真ん中で、みっともな…


気力を振り絞って、再び走り出す。


何台もの自転車に追い越される。


いいなあ、自転車。


でもあたし、1台しか持ってないからな…


そんなことを考えていると、また1台の自転車に追い越された。


しかし、その自転車はあたしの目の前で急停車した。


くしゃくしゃの黒髪、大きな背中。くるっと振り返ったその人物は。


「東、乗れッ」


早水だった。


あたしは何も考えずに、早水の後ろにまたがった。

< 186 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop