忘れた
「じゃあ、あたしと梨沙で落書きしとくから、奈緒は髪とメイクね」


「メ、メイク?」


あたしはメイクなんて、生まれてこのかたしたことが無い。


髪だって、つい最近初めて巻いたばかりだし。


「あたし、メイクしたこと無い」


そう言うと、みんな大きくなった目をさらに大きくさせて驚いた。


「まじ? じゃあ…麗、やってあげなよ。あんたが1番器用だから」


と里美が言った。いつも2つ結びの里美は、今日は髪を降ろして緩く巻いていた。


「よし、分かった。里美、落書きお願い」


そう言って、麗はあたしの手からTシャツを取って、里美に渡した。


そして、数分後…


「でーきたっ」


麗があたしの顔を覗き込んで、にっこり微笑んだ。


「はい、鏡」


麗から鏡をもらって、自分の顔を確認する。


「うそ…これ、あたし?」


鏡に映ったのは、見違えるほど大人っぽく変身した、あたしだった。


どうみても、高校生じゃない。


「奈緒、すっごく綺麗になったでしょ」


自慢げに、麗が言う。

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