忘れた
「早水?」


「そう。見た? 俺の華麗なダンス」


早水は自慢げに言った。


「すごかった。本当に、上手だったよ」


あたしが素直に褒めると、早水は頭をかく仕草をした。


「お前に褒められると、調子狂うな」


何それ…と言おうとしたら、ステージからものすごい騒音が聞こえてきた。


ギュイイン、とギターの音が響き渡り、ステージが色とりどりのライトに照らされる。


隣の席の男子は、耳を抑えてどこかへ行ってしまった。


そこへ、早水がヒョイと座る。


バンドの演奏の始まりだ。


本当に、この席は特等席だ。ステージ上が障害物無しでよく見える。


しばらく座って見ていたあたしだったけど、そのうち立たないと見えなくなった。


生徒たちがステージ前に集まって、音楽に合わせて飛び跳ねているからだ。


あたしは立ち上がり、その場でピョンピョン跳ね始めた。


早水を見ると、彼も一緒になって跳ねていた。

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