忘れた
あたしはそのまま体育館裏へ引っ張られてしまった。


体育館から漏れる騒音。


こんな人気のない場所で、早水と2人きり。


「ちょ、何なの?」


「東」


困惑するあたしに、早水は真顔で言った。


「俺の気持ち、気づいてんだろ?」


「あの、えっと。何のこと?」


わけが分からない。


「本当に分からない?」


早水の顔が近づき、不覚にもドキッとしてしまう自分がいた。


そういえば、いつか誰かに言われたんだ。


早水は、あたしのことが好きなんじゃないかって…


あ。思い出した。


あたし、早水にキスされたことだってある。


もしかして?


「あの、はやみ…」


唇を塞がれた。柔らかな感触は、懐かしくもあった。


っていうか、キス?


ちょっと、待ってよ。


あたし、彼氏いるんだよ?


逃げても逃げても、早水の唇が追いかけてくる。いつの間にやら、頭をガッチリ掴まれてしまった。


前は事故で済ませられたけど、これは…

< 201 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop