忘れた
角度を変えて、キスの雨が次々と降ってくる。


勇介とは違う…


勇介…


あたしはそのうち、早水のキスを勇介のキスと錯覚してしまっていた。


勇介のキスとは全然違うのに。


早水のキスは激しい。舌の感触も全然違う。


なのに、何でだろう。


応えてしまっている自分がいた。


しばらくして…早水は離れた。


「俺…好きなんだ。お前のこと」


頭がボーッとなっていたあたしは、早水の言葉で現実に引き戻された。


「え…」


「彼氏がいようが、関係ねえ。

好きだ。…奈緒」


早水が、初めてあたしのことを奈緒と呼んだ。


でも、でも、あたしは勇介が…。


「あたし」


「返事は文化祭が終わってから」


早水に遮られて、それ以上は言えなかった。


「こんなことしといてアレなんだけど。一緒にお化け屋敷、行かねえ?」


「…いいよ」


それくらいなら。

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