忘れた
ここは2階。


トイレは1階にしか無いので、あたしは店の奥のエレベーターに乗った。


ドアが閉まり…すると、誰かが走って乗り込んできた。


「早水?」


息を切らして、早水があたしの目の前に現れた。


ドアが閉まり、エレベーターは動き始めた。


「早水もトイレ?」


早水は首を横に振った。


じゃあ何で…


訊こうと思ったその瞬間、エレベーターの電気がパッと消えた。


ガタガタッ、と大きな音がして、エレベーターが止まってしまった。


あたしたちは閉じ込められてしまったのだ。


「な、何だ?」


早水の声がした。


文字通り真っ暗で、何も見えない。


あたしは恐怖で震えが止まらなくなった。


あの公園での出来事が頭をよぎる。


真っ暗な中、いきなりあたしの腕を掴んで闇へ引きずり込んだ。


あの男にあたしはいつまで怯えなきゃならないの…

< 208 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop