忘れた
「あー、早水…」


さっきは、早水の前でみっともない姿を晒してしまった。


あたし、早水に抱きついて、そのまま寝ちゃったんだっけ。


思い出して、急に恥ずかしくなった。


「何いまさら赤くなってんだよ」


早水がつっけんどんに言った。


「べっ、別に赤くなってなんか」


「耳まで真っ赤なくせに、よく言うよ」


う、うるさいなあ…


あたしは早水を無視して、エレベーターに乗り込むことにした。


本当はこんなポンコツエレベーター、乗りたくないんだけど、上に行くには乗るしかない。階段が無いから。


「ちょっと来て」


早水の横を通り過ぎようとしたとき、あたしの腕を早水が掴む。


そのままあたしは引っ張られて、店の外へ連れ出されてしまった。


もう、何なのよ…


「ちょっと、痛いからッ」


外はひんやりと肌寒い。


店明かりが、駐車場にいるあたしたちを照らし出す。

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