忘れた
病院に着いたとき、時刻はお昼の3時半を過ぎていた。


勇介には、今日行く、ということだけをメールしておいた。


最近あたしは勇介にはお見舞いに行くときなど、最低限のときしかメールをしていない。


電話なんて、皆無だ。


当然、勇介があたしの家を訪れることも無い。


寂しくて涙が止まらない夜が何度もある。


でも、勇介の前では絶対泣かないって決めてるんだ。


勇介が記憶喪失になっちゃった日に大泣きして、後ですっごく後悔したから。


目の前で知らない女が泣いてるなんて、普通引くよ。


勇介に会うのは、おとといぶり。


思えば、結構頻繁に来てるな、あたし。


土日のどっちかには必ず来る。平日だって、来れる日は来てた。


あたし…勇介にどう思われてるのかな。


もう、あたしたち、友達だよね?


あたしは早水を連れ立って、病室の前まで来ていた。


「じゃあ、入るからね」


早水は、無言で頷いた。


コンコン

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