忘れた
返事は無かったけど、あたしはドアを開けた。


「勇介…?」


あたしはベットへ近づく。


勇介は寝ていた。


規則正しい寝息に合わせて布団が上下する。


口は半開きだ。


本当…子供みたいな寝顔。可愛いなあ。


でも、とても綺麗な顔だ。


長いまつげに、綺麗な肌。


ふっくらとした、唇…


思わずキスしたい衝動に駆られる。


「起きるまで待とか」


あたしは早水に、ひそひそ声で言った。


早水はすごく不愉快そうな顔で、勇介を見つめていた。


返事くらい、しなさいよ。まったく。


「…」


その瞬間、あたしは頭を銃で撃ち抜かれたかと思った。


それくらいの衝撃だった。


全身に電流が走ったかのごとく、体が痺れる。


今の声は、早水じゃない。


もちろんあたしでもない。


確かに、彼は言った。


かおり…って。

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