忘れた
開くって書いて、かいって読むんや。珍しいやろ?誰にでも心を開けるようにって、母親が付けたんやと。


ちょっとナマッた喋り方が印象的な、頼れるお兄さんって感じの人だった。


8月の半ばに、一緒にバレーの試合をした大学生のグループにいた人だ。


連絡先を交換して以来、丸っと3ヶ月連絡がなかった。


あたしは緊張気味に電話に出た。


「もしもし?」


「あー、もしもし。久しぶりやな。

七瀬です。七瀬 開。覚えとる?」


懐かしい声と、懐かしい喋り方。楽しかった思い出が呼び起こされる。


「はい、覚えてますよ。開くって書いてかいって読む、七瀬 開さんですよね」


そう言うと、ホッとした様子の開さん。


「よかったわあ。覚えとってくれて。

突然電話してごめんな?ちょっとお誘いしたいなー思ったことがあって」


お誘い?


不思議に思いながら続きを待つ。


「俺ら、今度の土曜日にライブやるんやて。奈緒ちゃんも来てくれへんかなって思って」

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