忘れた
「今? ってことは」


「はい、そうですそうです。

あたしたち、あれから付き合うことになりまして。

で、色々あって別れた…のかな?」


「知らんわ」


素早いツッコミ。面白い人だ。


別れた…のかな? っていうのは本音だ。


別れたわけじゃないけど、結果的には別れている状態なわけで。


勇介の今の状況を教えておいた方がいいだろう。


「勇介は今、入院中なんです。事故っちゃって。

だから行けないと思います」


「そうかあ。それはお気の毒になあ」


残念そうに、開さんは言った。


「奈緒ちゃんだけでも来れへんか? な?いいやろ? あかん? ダメ?」


そんな攻めた聞き方、ズルいよ。


断りにくいじゃん。


そんなに沢山チケットが余っているのだろうか。


「はあ…

分かりました、行きますよ。友達誘って」


「まじで? めっちゃ嬉しいわあ。ありがと。詳しいことはメールする」


電話を切ってからも、開さんとのやり取りが頭の中でリピートしていた。


そういえば、開さんって結構強引だったんだよな。

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