忘れた
俺は記憶の中にいた。


これはつい最近の記憶だ。


いや、本当は10年近く前の記憶。


3年生になってから、俺たちは補習やなんやで忙しく、すれ違いの日々を送っていた。


おまけにクラスが別々になってしまい、新校舎の方の教室になった香とはぜんぜん会えなくなった。


そんなある日の放課後のこと。


時刻は夕方の4時。


高校の真裏にある公園で、俺は香を待っていた。


「ごめん、待った?

担任の話が長くて、遅くなっちゃった」


「ううん。俺も今来たとこ」


本当は結構待ったんだけど、格好つけたくて嘘をついた。


「急にどうした?

わざわざ公園に呼び出すなんてさ」


「あ、うん…」


香は言いにくそうに、下を向いた。


嫌な予感がした。


いや、予想はしていた。改まって話がしたいなんて、悪い話に決まっている。


「あたしたち、もう、別れよ」

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