忘れた
コンコン、とドアをノックする音がした。


「勇介…?」


ドアが開き、姉ちゃんが部屋に入ってきた。


「ちょっといいかな…」


「うるっせえ。出てけ」


壁を殴った音が聞こえたんだろう。


文句を言われる前に追い出してやった。


「あーあ、ハハハ」


自分に笑えてきた。


何なんだろう、俺って。


格好つけてたっけ、俺。


香。


俺は、香にふさわしい男になりたかっただけなんだ。


それが、自然体じゃないと感じた原因か?


頑張ってたのか、俺。


「香…」


「かおりって誰? 元カノ?」


ハッとして目を開けると、そこにいたのは見知らぬ少年。


と、ここはどこだ?


病室のようだが…


あ…


そうだ。俺は26歳のフリーター。


事故って入院中だった。


今のは、夢…?


「お前がアイツの…

ふーん。あっそう。へえ」

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