忘れた
俺のベッドの傍らの椅子に座ったその少年は胡散臭そうに、俺を観察していた。


誰だろう。見覚えがない。


見たところ、俺と同じ…いや、高校生くらいの年齢だ。


くしゃくしゃの黒髪に、キリッとした目を細めている。


「君は…」


誰? という言葉を飲み込んだ。


もしかしたら知り合いかもしれない。


「俺は早水聡。お前とは初対面だ」


少年は早口で名乗った。


「お前、東のことどう思ってんの?」


俺のことをお前と呼ぶこの少年に、俺はなぜか好かれていないようだ。


初対面ということは、面識がないということである。


じゃあ何でここにいる?


っていうか、東って…


「東って誰?」


途端、聡は目を見開いて勢いよく立ち上がった。


「お前、本気で言ってんの?」


聡は俺に怒った顔を近づけると、大声で叫んだ。


「東 奈緒だよッ

お前の彼女だろうがッ」

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