忘れた
東 奈緒。


奈緒のことか。


「ああ、奈緒ね。

奈緒は彼女じゃないよ」


奈緒、と俺が言うと、聡の眉がピクリと跳ねた。


「あそ。まあいいわ。

で、東のことどう思ってるわけ?」


そう言ってドスン、と椅子に座りなおす聡。


「どうって言われてもなあ…」


よくお見舞いに来てくれるし、いい子だと思う。


「なんだよ。ハッキリしろよッ

東が可哀想だと思わねえのかよッ」


はあ?


「なに怒ってんの、聡」


「聡とか呼んでんじゃねーよッ」


はあッ?


もう、こいつ何なの?


「ちょっとさあ、そんなケンカ腰で来られたらこっちも困るんだけど」


さっきからこいつ、眉間にシワ寄りっぱなしだし。


誰がどう見ても、こいつは奈緒のことが好きだ。

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