忘れた
しばらくして、いきなり会場は真っ暗になった。


反射的に、あたしは隣の梨沙の腕をガッチリ掴んでいた。


暗いところは苦手なのだ。


「奈緒、大丈夫。あたしがいるから」


梨沙は優しく言った。それだけで、あたしは少し安心した。


スポットライトに照らされたステージに、1人の男が現れた。


『えー、大変長らくお待たせいたしました。本日はお越しくださいまして、誠にありがとうございます』


かしこまった挨拶が何だか可笑しい。


『本日は、6組のバンドが登場いたします。2時間弱、どうぞ楽しんでいってください』


そう言って男はステージからはけ、入れ替わりに最初のバンドメンバーたちが現れた。


それからはもう、驚きの連続だった。


演奏の上手い下手はよく分からないけど、ボーカルの歌唱力がとにかくスゴイ。


失礼だけど、文化祭のバンドとは何倍もレベルが違った。

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