忘れた
あっくんの家は、ライブ会場から徒歩10分という、とても近い場所にあるらしい。


あたしたち6人は、2列になって道路を歩いていた。まるで小学生の通学班みたい。


前を歩く梨沙と開さん。何の話をしているんだか知らないが、なにやら2人で盛り上がっている。


私の隣には、長身金髪のあっくん。


見た目は怖いけど、実際に喋ってみるとそうでもないことが分かった。


彼の名前は立花 有馬(たちばな ありま)。


開さんと同じ大学に通っていて、バンドではベース担当らしい。


友だちは皆、彼のことをあっくんと呼ぶらしく、あたしもそう呼ぶことにした。


「あっくんは1人暮らしですか?」


あたしが訊くと、あっくんは首を横に振った。


「いや、姉ちゃんと2人暮らし。親は2人とも海外にいるんだ」


あっくんの家に到着したのは、夕方の6時過ぎ。


駅の裏の、茶色いマンションの3階。


そこが彼の住まいだそうだ。

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