忘れた



気づけば、あたしは泣きながら話していた。勇介は1度も口を挟まず、真剣に話を聞いてくれた。


「今でも時々、瑠衣や他のみんなの声が聞こえるの。

あの頃言われたことを忘れることができないみたい。

そのたびに悲しくなって、涙が出るの」


そう言って、あたしはハンカチで顔を隠した。


「奈緒…」


勇介が口を開いた。


「デザート食う?」


このタイミングで、デザート? あたしは思わず吹き出してしまった。


もっと他に言うことないんかいッ


あたしは勝手に、同情されるものだと思っていた。


泣きながら笑うあたしを見て、勇介は困った顔をした。


「俺、何か変なこと言ったか?」


「別にッ。食べよ食べよ、やけ食いよッ」

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