忘れた
あたしはまた泣きそうになった。そして、勇介の大きな背中にそっと触れた。


「嘘でも嬉しいよ…」


胸がジーンと熱くなった。


そして、不思議と心はスッキリしていた。


今まで誰にも打ち明けずに1人で抱え込んでいたせいで、あの頃のことをずっと引きずっていたのかもしれない。


ずっと、誰かに聞いてほしかったんだ。


「嘘じゃないって。まじだからッ」


勇介はそう言うけど、あたしは美人なんかじゃないって、ちゃんと自覚してる。


「はいはい。分かった分かった」


あたしの適当な返事に勇介は、本当なのに、と呟いた。


勇介は優しい人だと思う。


あたしは、この人のことをもっと知りたいと思った。

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