忘れた
「あたしのことはもういいから、勇介の話してよ」


「俺はただの、26歳だ」


「なにそれ」


自分の話はしたくないのかな、と思ったけど、あたしの好奇心は高まる一方だ。


「例えばさ、生まれはどことか、家族構成とか、今までどんな恋愛してきたのかとか」


すると勇介はケラケラ笑った。


「奈緒ちゃんは俺の恋愛に興味があるのかー。そうかそうか、それなら教えてやらんこともない」


今の言い方、ちょっとムカつく。


「例えばって言ったじゃん」


あたしは勇介の背中を思いっきり叩いた。


勇介はギャッと悲鳴をあげて、自転車が大きく揺れた。


「いってぇな。もう降ろすぞ」


「あたしの自転車ですけど」


「あ、そうだった」


勇介って、見かけによらず意外とバカなのかも。

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