忘れた
それからあたしたちは、他愛のない話で盛り上がった。


冗談を言って笑ったり、からかい合ったり。なんて懐かしいんだろう。


あたしは密かに感動していた。


「ちょっと休憩な」


そう言って勇介は、小さな空き地の前に自転車を停めた。


ベンチが1つあるだけの、殺風景な場所だ。


あたしたちはベンチに腰掛けた。


「連絡先、交換しない?」


そう言って、あたしを覗き込む勇介。栗色の目がとても綺麗だ。


よく見ると、まつ毛が長くて彫りが深い。


一体その目で何人の女の子を落としてきたんだろう…


って、おいおい、ちょっと待て。


今、何て言った?


あたしの、連絡先が、何だって?

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