忘れた
「あのー、奈緒? 聞いてる?」


どうやら固まっていたらしい。


「ええ? あ、うん。あー、えっと何だっけ?」


あたしは、しどろもどろに答えた。


「だーかーら、連絡先教えてっ」


「ええッ」


思わず大きな声が出る。


「あたしなんかの?」


勇介はうんうん、と頷く。


「っていうか、その反応、ショックなんですけど。そんなに嫌?」


いえいえ、とんでもないっ。あたしはブンブン首を横に振る。


「あたしのでよかったら…」


「やったッ、じゃあ俺の携帯にかけて。番号は…」


無邪気に笑う勇介はとても幼くて、あたしより9つも年上なんて信じられなかった。


笑うと顔が全然変わるんだ。こういうギャップに女の子たちは弱いんだろうな、なんて冷静に分析するあたしだった。

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