忘れた



もう我慢できないッ


あたしは起き上がって、iPodとケータイと小説を何冊か掴んでカバンに放り込んだ。


時計を見ると、あと5分で夜の7時。夏の空はまだ明るかった。


家にあたしの居場所はない。


自転車で20分ほどの距離に、市民図書館がある。そして、敷地内は広々とした立派な公園になっていた。


あたしの大好きな公園。


健人の友達が帰るまで、時間をつぶせるのはここしかない。


最近あたしは、よくここに来るようになった。


家がうるさいなら、静かなところへ自分が行こう。そう開き直ることにしたのだ。


公園の真ん中には大きな噴水があって、それを取り囲むようにベンチが並んでいる。


いくつかのベンチには人がいた。


あたしは空いていたベンチに腰掛け、持参した小説を読み始めた。

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