忘れた
「姉貴ッ」


それを自覚したのか、健斗は怒りの矛先をあたしに向けた。


健斗は人がいるところでは、あたしのことを“姉貴”と呼ぶ。低い身長を補うように、髪の毛もツンツン立てちゃって。


あたしに言わせれば、ただのカッコつけだ。


「誰だよこいつ。っていうか、友達来てる時は入ってくんなって言ってあったよな?

姉貴と違って俺は青春を謳歌してんだから、邪魔しないでくれる?」


出た、青春を謳歌。


それに、あたしのことを完全に見下してる。でも、その通り…


言い返せない自分に苛立つと同時に、あたしはどうしようもなく悲しくなった。


すると、突然勇介がプッと吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。

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