忘れた
勇介に続いて、あたしは車の助手席に乗り込んだ。


お? なんだこの匂い。前に乗ったときとは違う、甘酸っぱいレモンのような香りがした。


「勇介、いい匂いがするね」


「来る前に消臭剤かけたから、それだろ」


「ふうん。レモンの匂いの消臭剤かあ」


勇介が気を遣ってくれたんだな。そういうところ、優しいよね。


「で、どこ行くの?」


「まずは、昼飯だ」





相変わらずの食べっぷりに驚くあたしをよそに、勇介は次から次へと肉を口に放り込む。


ここは90分食べ放題の、焼肉のお店。


「肉取ってくるから、奈緒は焼いてて」


「げ。まだ食べる気?」


あたしは呆れて言った。もうあたし、お腹いっぱいだよ。


「まだまだ食うよ。モト取らないと」


心配しなくても、あれだけ食べたんだからとっくにモトは取れてるよ。

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