忘れた
すると速水はあたしをジッと見つめて、言った。


「東は笑ってた方がいいよ」


な、なに恥ずかしいこと言ってんの?


「そりゃどうも…」


あたしはとりあえずお礼を言った。


「じゃあ、また明日な」


「うん、また明日」


駅で早水と別れ、電車に揺られること30分、そこから自転車を10分走らせ、やっと家に到着した。


いつもの癖で、2階の健斗の部屋を見上げる。…静かだ。


「ただいまー」


「おかえり姉ちゃん」


健斗がリビングから出てきてあたしを出迎えるなんて、前まではあり得なかった。


これも勇介効果か?


いや、もしかしたら裏があるのかも。


ニコニコ顔の健斗に、あたしは意地悪く微笑んだ。


「お出迎えなんて、珍しいわね」


「いやー、ちょっと頼みがあって…」


ほらきた。

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