忘れた
彼は着ていたパーカーを脱いで、あたしにかけた。カッターシャツがはだけて、下着がむき出しだったのだ。あたしは慌てて前を隠した。


「家まで送ってくよ」


彼はそう言って立ち上がった。


「そんな、悪いです…」


あたしも立ち上がろうとしたけど、足に力が入らずヘタっと崩れ落ちそうになる。


彼が支えてくれたおかげでそうはならずに済んだ。


「そんなんじゃ家まで帰れねえだろ。

車で送るから。うち、そこなんだよね」


彼が指さしたのは、公園のすぐ裏にある小さなアパートだった。


「でも自転車が…」


「それなら駐輪場があるから、そこに入れときな。

今度とりに来ればいいからさ」


「は、はい…」

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