忘れた

ずっと前から

唇を挟むように、角度を変えながら…


何度も何度も、俺は奈緒にキスをした。


もう、夢中だった。


交わる吐息。口から漏れる艶かしい音。


次第に深くなり、奈緒が口を開けた隙間から舌を滑り込ませる。


奈緒のそれを見つけると、優しく絡め合わせた。奈緒もそれに応えてくれた。


最初は寝ぼけていたのだが、今は意識がハッキリしている。だけど、もう止めることは出来なかった。


奈緒のサラサラした長い髪、スベスベした頬、柔らかな唇。その全てが俺を夢中にさせた。


次第に俺の体が火照りだすのが分かる。心臓がものすごい速さで胸を突く。


気づくと俺は奈緒を押し倒していた。


唇から頬へ、首へとキスを移動させる。


奈緒の体も熱くなっていた。


カッターシャツのボタンに手をかけ…


胸に触れたとき、奈緒の体がビクッと震えた。


「いやッ」


俺はびっくりして、手を止めた。


奈緒は震えていた。


そのときになって、おれは思い出した。奈緒は襲われた経験があるということを。

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