忘れた
あ、やばい。俺のこと変態だと思われた。


「いや、違うよ。奈緒、聞いて?

男はみんなそうなんだって。定期的にそういうの見ないとやってけないんだよ」


なに焦ってんだろ、俺。


するとなぜか、奈緒は安心したように微笑んだ。


「そっかあ。そういうの見てるから、キスがうまいんだ。

いっぱい経験があるのかと思っちゃった」


キスがうまい…ちょっと嬉しかった。


「バカヤロウ。俺が誰かを好きになるなんて、高3のとき以来だっつーの」


「へえ。高3ねえ」


奈緒は抑揚のない声で呟いた。


「あ、もしかして、ヤキモチ?」


「バカッ、そんなわけないじゃん。高3でしょ? 何年も前じゃない」


「あー、そうやって俺をおじさん扱いしていいのか? キスするぞ」


「勇介、キャラ変わってるよ」


こうして俺たちがぎゃあぎゃあ騒いでいるうちに、夜は更けていった。

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