忘れた



体育祭当日。秋晴れの透き通った青空が広がっていて、まさに体育祭日和。


「はい、出来た。ポニーテールは自分で出来るよね? じゃあ最後、奈緒」


「はーい」


麗に背を向けて座るあたし。やっとあたしの番が回ってきた。


みんな、編み込みは、手先が器用な麗に任せることにしたのだ。


鏡を手に、麗があたしの髪を編み込む様子を観察する。


麗は、スッスッとあたしの髪を自在に操り、あっという間に両サイドの編み込みを完成させた。


「ありがと、麗」


「いえいえ」


普段はおっとりしている麗だが、今日はなんだか頼もしく見える。


あたしたちの右腕には、青ペンで書かれた“必勝”の2文字。


これもお揃い。嬉しいな。


「今日は勇介さん来るの?」


ポニーテールをしながら舞花が訊く。


「来ないよ。仕事だって」


「そっか。残念だなあ」


肩を落とす舞花。


「いいのいいの。今日は頑張ろうね、青団優勝ッ」


あたしは明るく言った。

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