サクマドロップス
*
「な…にか運動をしてるんですか?」
「…うん。水泳部で活動してるよ。」
綺麗目な服装の彼女に対し、俺はハーフパンツのジャージに部活のポロシャツを着ている。
明らかに…
………不釣り合い。
だけど、
「…素敵ですね。」
彼女は極上の言葉を俺にくれる。
好きな人から貰う言葉は全部全部…
特別で宝物になる。
今なら優勝できちゃうぐらい、
高まっている気がする。
だけど俺の心臓はばくばくで、
限界に近い。
そんな俺の様子を不審に思ったのか、
首をかしげて俺を見つめた。
……可愛い。
だけど俺の心臓はオーバーワーク。
「ちょ…それ無意識?」
「……え?」
キョトンとする彼女は、
もう可愛い以外なにもなくて、
俺の顔は真っ赤に染まる。
「……藤原さん」
「泰誠…でいい。」
どくん どくん どくん
「泰誠く…ん……?」
ダメだ。
免疫がない。
赤く染まる顔を見られるのは、
カッコ悪い。
両手で覆うけど、肝心な耳を隠すことが出来ないでいる。
恥ずかしい。
「私のこと…は、ま…ま……」
「真雪ちゃんって呼ぶよ。」
その時、
彼女の顔が林檎のように真っ赤になって…
俺を見つめる瞳が潤んで見えたのは、
俺の気のせい?
「ハハハ、真雪ちゃん真っ赤。」
「た、泰誠くんこそ赤いじゃないですか!」
彼女が笑う。
それだけで嬉しくて、
それだけで幸せになれる。
だけど、
「おね…………真雪?」
現れた声によって、
幸せも嬉しさも、
一瞬にして崩れていった。