サクマドロップス
「真弘(まひろ)?」
「ごめん、連絡出来なくて…
その……待った?」
「ううん、全然。
それより、これ忘れ物。」
「さんきゅ。」
真弘と呼ばれる男の子は確か…
陸上部の2年生。
短距離のエースで…
結構モテている男の子だ。
彼は俺を見ると、
「藤原…先輩?」
怪訝そうに俺を見つめた。
もしかして……
「…あ、真雪。
明日映画でも行かない?」
「うん?いいよ?」
そうだよな。
普通に彼氏…だよな。
だけど彼女…真雪ちゃんは、
「真弘あっち行ってよ。」
邪険にしている。
彼氏といるところを見られるのが恥ずかしいのかな?
そんなことを考えながら、彼にしか見せない表情を俺に見せる真雪ちゃん。
心が乱れて、
息苦しくて、
壊れそうになる。
白い色をした飴。
甘いと思い込んで、
口に放り込めば、
スッとする涼しさと大人の苦さが、
刺激する。
やっと話せたのにその子には彼氏がいて、
一瞬にして大人の苦さを思い知る。
まるではっかのような…
そんな味がした。