サクマドロップス
授業も終わり、家に帰ると
「真雪、おせぇぞ。」
年下とは思えないほど生意気な私の弟…
「…なんでいるの?真弘…。」
そう、真弘がいた。
いつもは部活があるから帰りは20時過ぎまで帰ってこない。
真弘いわく、今日は雨が降って練習が中止になったらしい。
「なぁ、おねぇちゃん。」
「…なに?」
「…好きなやつでもいるだろ?」
「………………………いない。」
「…なに、その間。」
「気にしない。」
真弘の言い分も聞くことなく、私は部屋へ逃げ込んだ。
そして
カラン…
サクマドロップスを振る。
出てきたのははっかのドロップス。
口に放り込めば、
すーすーして涼しくなった。
「…"好きなやつ"か。」
ふと浮かぶ彼の顔。
「実るわけないのに…。」
大切な人が居る彼を諦めきれない自分に失笑する。
辛い。
「どーして好きになっちゃったんだろ?」
私の独り言をドアの向こう側で真弘が聞いていたことは、私は気づきもしなかった。