サクマドロップス



だけど知り合う転機はすぐに訪れた。


それは…



「…なんで私が真弘の忘れ物を…。」



昨日あれほど言ったのに、真弘はお弁当を持っていくのを忘れていったのだ。

それをお母さんに届けるように言われ、今に至る。



「……もうっ」



だけどお母さんに頼まれたからには届けるしかない。


渋々私はいつもと同じ学校の最寄り駅に降りた。




改札を出ればホームで会う彼の後ろ姿を背に歩くのではなくて、


今日は私の後ろ姿を背に、彼のあとを追い掛ける。



「ふふふっ」



会えたら嬉しい。

そんなことを考えながら学校に向かう。


さっきまでの憂鬱感が嘘みたいに晴れていく。



だけど…

さすがスポーツ名門校なだけあって…



校舎が広い。



どこに入り口があるのかも…



さっぱりわからず、



ウロウロ ウロウロ…



弟に連絡入れても繋がらない。



これは困った。



どうしよう。



「きゃ。」



そんなとき、強めの風が吹き付けて、


麦わら帽子が宙を舞った。








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