サクマドロップス
あれから俺は彼女に会うことなく、
早くも1週間経とうとしている。
来る日も来る日も…
駅のホームで彼女を待ってみたけど、
現れることはなかった。
あぁ…
明日は関東に繋がる大事な試合なのに、俺のモチベーションは最悪もいいところだ。
これじゃあ今までの努力が水の泡。
だけどこの無気力はどうにもならない。
はぁ…
ため息をついていると
「朝から溜め息吐くな!」
「うるさー。」
ひろなが電車に乗ってきた。
そして車内を隅から隅を見ると…
「今日もあの子居ないね。」
「…うん。」
「あんたそんなんで明日の試合大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。」
ひろなまでもため息をついた。
もう試合なんて気分にもなれない。
こんなに落ち込んでしまうことも、人生で初めてかも。
「水泳部のエース!しっかり!」
「…難しい。」
「どうやったらモチベーションを取り戻せるのよ!」
「…会いたい。」
一目でいい。
彼女に会いたい。
そしたらもうなにもいらないから、
もう話せなくてもいいからさ、
お願いだから俺と、
もう一度だけ話してくれよ。
「…あ、いいこと考えた。」
「いいこと?」
「うん!」
ひろなはこそこそと俺に耳打ちする。
「!」
「いい考えじゃない?」
そうか。
その手があった。
無気力で使い物にならないからだも
糸で引っ張られるように、力がみなぎった。
そうだ。
逃げちゃいけない。
待っているだけじゃ駄目だ。
「…ひろな。俺頑張る。」
「おう!頑張れ、恋する乙女!」
「乙女じゃないんだけど。」
ねぇ、
俺はキミを追い掛ける。
だから、
もう一度あの笑顔を俺に見せてください。