サクマドロップス
ガタン ゴトン ガタン ゴトン…
電車に揺られるなか、
俺はいつもドアの横に持たれながら、外の風景を見ている。
これもフリであって、そこから見える彼女をチラリと見ること…
気持ち悪いかもしれないけど、
俺は彼女をこういう方法で見ることしか出来ない。
スポーツマンなくせに、
恋愛では全くの根性なし野郎。
外面だけじゃなくて、
内面も肉食になれたら俺は彼女と話せるなかにいたのかな?
*
彼女は小さな口に入っているドロップスを美味しそうに、
満足げに味わっているんだ。
だから俺も
カラン…
サクマドロップスを口に入れるんだ。
彼女がいつも食べてるから、密かに影響されて。
…ううん、違う。
ドロップスが缶から出る音を聞いて、
彼女に俺のことを気づいてもらいたくて…
カラン…と音をたてるんだ。
そうするとその子は一瞬だけ、視線を俺にうつしてくれる。
二重瞼の大きな目に、真っ白な肌。
長い髪をポニーテールにした…
…彼女は、
俺と目が合うとすぐにそらしてしまうけど、
それでももう一度見てくれるんだ。
そして俯きながらふんわりと微笑むんだ。