サヨナラなんて言わせない
カナは信じられられないと言いたげな顔をしていたが、やがて納得したように頷いた。

「司の彼女に対する思い入れの強さは嫌と言うほど知ってるから信じるしかないわよね。・・・それで?どうするの?」

「・・・・悪いがもうしばらく会社を休ませて欲しい。おそらく涼子は数日寝込むことになる。その間は看病をしたいんだ。そして彼女が落ち着いてからあの話をしたいと思ってる」


ただでさえもう5日も無断で仕事を休んでいる。
その上さらに休みをくれだなんて、普通なら絶対に許されない行為だろう。
俺は烈火の如く文句を言われる覚悟をしていたが、予想に反してカナは何の反応も示さなかった。むしろそれをわかっていたかのような顔だった。

「仕事に穴を開けるなんて許さない!社長失格!!
・・・・と言いたいところだけど、司がこの3年ただの一度も休みを取らずに馬車馬のように働いてきたのはそのためでしょう?納期だっていつも充分な余裕をもって仕上げてる。今現在も切羽詰まった仕事はない。
・・・・・それだけ努力してきたあんたを知ってるのに、駄目だなんて言えるわけないでしょう?」

「カナ・・・・」

カナはコツコツとヒールの音を響かせて足を進めると、俺の目の前へとやって来た。
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