サヨナラなんて言わせない
「会社は私に任せて。司はちゃんと彼女にぶつかってきな。・・・・骨はちゃんと拾ってあげるから」

カナはそう言って握り拳を作ると、俺の胸をドンっと小突いた。


親友の優しさが身に染みる。

いつだって、俺と真剣に向き合ってくれたのは奏多だった。

辛いときにすくい上げてくれたのも、
どうしようもない俺に活を入れてくれたのも奏多だ。


あの時・・・・

涼子を失って自暴自棄になって抜け殻のようになってしまった俺に奏多は言った。


『お前はそれでも男か!彼女を失ったのは他でもない自分のせいだろう?!
それなのに塞ぎ込んでお前は一体何がしたいんだ。そんな情けない男のところに彼女が戻ってくるとでも思ってるのか?お前が今すべきことは何なんだ?
後悔してるってんなら男を見せやがれ!それもできずに落ち込むだけなら男なんてやめちまえ!!』


あんな口調の奏多を見たのはいつ以来だっただろうか。
あの時奏多がいてくれてからこそ、俺は目が覚めることができた。

今の俺がいるのは彼の存在があってこそなのだ。
< 102 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop