サヨナラなんて言わせない
その親友の言葉を無駄にすることはできない。

俺は決意を新たにすると、強い眼差しで親友の顔を見据えた。

「あぁ。たとえどんな結果になろうとも今度こそ正面から向き合ってくるよ。
・・・だからここは頼んだぞ」

俺の言葉に奏多も力強く頷いた。



俺たちが部屋から出て行くと、すぐに岡田が駆け寄ってきた。彼は以前勤めていた先で知り合った男で、独立にあたって声をかけた、俺たちを含めてわずか3人しかいないこの事務所の大切な戦力だ。

「社長!もう仕事には復帰されるんですか?」

「いや、悪いがもうしばらくは休ませてもらう」

「えっ、一体何があったんですか?社長が休むなんてただ事じゃないですよね?」

岡田はとにかく勉強熱心で、少しでも俺から技術を盗もうと必死に頑張ってる。
これまで一日だって休むことなく働いてきた俺が突然これだけ会社を空けるのだから、彼がそう思うのも当然のことだろう。

どこまで話すべきか考えあぐねている俺に代わって口を開いたのは奏多だった。
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