サヨナラなんて言わせない

その日の夜、涼子はいつも通りの時間に帰ってきた。

予想通り俺の話には全く耳を貸そうとはせず、とりつく島もなかった。
だがひとまずちゃんと帰って来てくれたことにほっとしていた。

相変わらず顔色は悪いままで、寝込むのも時間の問題だと確信する。
不幸中の幸いか、明日は土曜日。
仕事もないことだしゆっくり休んでもらえばいい、俺はそう考えていた。



「涼子さん、おはようございます」

翌朝、いつもより遅めに起きてきた彼女に笑顔で挨拶をする。
だが顔を見た瞬間その笑顔も引っ込んでしまう。
予想以上に具合が悪そうだったからだ。

「・・・涼子さん、顔色が悪くないですか?」

言い当てられてバツが悪いのか、涼子はすぐに視線を逸らした。

「そんなことない」

「でも・・・」


とにもかくにも今日はしっかり休んでもらわなければ。
それを伝えようとした俺よりも先に彼女は予想だにしないことを言い出した。


「今日出掛けてくるから」

「え?」

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