サヨナラなんて言わせない
「な、なにこれ・・・」

食卓に並べられた料理を見て彼女が一瞬息を呑んだのがわかった。

・・・・何だ?やはりオムライスに何かあるのだろうか?

あれから悩んだ結果、付け合わせはオニオンスープとアボカドのサラダにした。
記憶はないが、どうやら俺はそこそこ料理ができる人間らしい。
勝手にメニューが浮かんで、勝手に体が動いていく。
自分でもその手際の良さに驚いていた。
たとえ記憶がなくとも、体に染みついたものは消えることはないらしい。

なんとなく作った料理を見て彼女が示したこの反応。
偶然・・・・?とは考えにくい。

何故ならこの3日、彼女は何を出しても反応しなかったからだ。
ほとんど会話もなく黙々と食べるだけ。
いただきますとごちそうさま、いってきますとただいま。
必ず口にするのはこの言葉くらいだ。
余程の用がない限り彼女が俺と会話をすることはなかった。


その彼女がたかだかオムライスを見て固まっていた。
俺はそこに何か秘密が隠されていることを確信した。

俺と彼女は一体どういう繋がりをもっていたのだろうか・・・?
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